宇和町賛歌

宇和町の明石寺へお参りしようという知人の誘いで同行した。
時々お参りするが、今まではほとんど車だったりバスで行ったりしていた。乗り物に酔うという知人は汽車で行くというので大喜び、子供のようだと夫は笑っていた。

   

駅から明石寺までの道のりでは、古き良き時代を思い起こし、路地のあちこちの家並みからたまらなく懐かしい心地がする。
歩いていた町の軒下に「指物大工」の看板を見つけて忘れていたものをみつけたような温かみをおぼえた。

   

こぢんまりした洋品店もあった。ウインドーを眺めていた私たちに、店の主人はとってもきれいな優しい言葉で声をかけてくれた。ぬくもりのある響きがうれしく、何にも買わず立ち去る私たちに、にっこりほほ笑み、静かに頭を下げて見送っていた。
今度来たときはぜひあの店でブラウスの一枚でも買って帰りたいと思った。

   

宇和町の町並みや路地で見つけたささやかなぬくもりがとってもうれしく心がなごんだ。
宇和町の町並みが近代的に変わってほしくない勝手な願望でいっぱいになった。

   

平成二年十二月三十日 愛媛新聞「へんろ道」掲載

   

   

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