老いゆく思い
「あなたにも今にわかると母言ひし 老いゆく思ひ知りそめにけり」。
中央紙の投書コーナーでこの句を目にし、実感としてしみじみ思うこのごろです。
十年前に亡くなった養母も、そのようなことを時々口にしていましたが、当時若かった私には子育てに忙しかったせいもあり、ついつい聞き流していました。
今になってその一つ一つの言葉が胸にしみます。私もそんな年に近づいてきました。
親の年になってみないとなかなか理解できないことも多く、今こんなことを子供たちに話しても、まだ若い彼らには当時の私同様『老いゆく気持ち』は分からないのではないでしょうか。
幸い私の実の両親は松山に健在で、十一月に満百歳になる父と、九十五歳になる母が元気でおります。特に父の気力、パワーはすごく、面倒をみている七十歳になる兄も驚いております。
好物のウナギなら毎日でも食べたいようですし、ご飯は朝からどんぶり茶わん一杯をたいらげるそうです。私の一日分です。
頭もしっかりし、電話もよくかけてきます。新聞も時間をかけてゆっくり読んでいるようです。
父のこの元気印の源は一体何だろう、といつも兄や姉、弟たちと話しています。
『老いゆく思い』は一人ひとりさまざまでしょうが、最後に求めるものはやはり優しさではないでしょうか。秋風に身をまかせながら、ふとそんなことを考える毎日です。
平成九年九月三日 愛媛新聞「へんろ道」掲載
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