弟
昭和二十一生まれ、満二十二歳、身長一七五センチ、体重八六キロのこの巨大なる弟は、目下県警本部の白バイに勤務している。同じ警察に勤める兄の家に居そうろうの身である。
私と六つも年が離れているのに、弟が年よりだいぶんふけてるらしく、昼間は実家の店を手伝っているこの私を、店のお客さんの中には弟の嫁と思っている人もいて、ついこのあいだも二十日の交通事故0の日にお客さんの一人が「奥さん、きょうは0の日だから、ご主人も松山で忙しいことでしょうなあ」といわれ苦笑する。
ことしにはいって、この弟が中古車のポンコツを購入した。
春のゴールデンウイークに宇和島へ帰った弟は、松山へ戻る時にはこのポンコツの後ろのシートいっぱいにマットレス、それに実家の父母がビールの値上げとかで、買いおきをしていたビールを二ケースもちゃっかりつみこみ、勇んで帰っていった。
今まで汽車で帰る時は、これもあれも持って帰れといっても、荷物になるから何とか理由をつけて持って帰らなかった弟が、中古車を買ってからはこのありさまである。
この弟が今月にはいって三日間休みがとれたからと帰ってきた。
こんどは車でなく汽車である。三日間わが家に泊まった弟は、大変な暑がりやで、しまいかけた扇風機を引っぱり出し、一晩中かけていた。
この弟の、シャツや下着を洗たくして干していたら、顔見知りの奥さんが、通りかかって「奥さん、お宅のご主人はスマートなのに、大きなシャツ着さるのやなあ」といわれ大笑いする。
でもとてもやさしい弟でもある。
この弟のお嫁さんになる人はどんな人かしら?
暑がりやで食いしん坊の弟のお嫁さんになる人も大変だ。でもとても楽しみである。
この広い空のどこかで未来の義妹はなにをしているのだろう。
何年か先には「おねえさん」と呼んでくれる妹ができる。
妹のいない私は、どんな人だろうと、とても楽しみにしている。
昭和四十三年十月三日 愛媛新聞「てかがみ」掲載
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