コスモス
秋も深まってまいりました。家々の庭先に、コスモスがかれんな花を咲かせているのが、目につきます。ピンクの花、紅の花、清い花々のコスモスもかれんでかわいくとても好きです。
昔、少女のころ、コスモスの花を見ていると、まるで自分が、少女小説のヒロインになったような気がして、とてもロマンチックな空想にふけったことを思い出します。
娘時代、コスモスの花は清そで清純で、ひっそりとたたずむおとめの姿を連想し、そんな人になりたいと、ひそかに夢みたものです。
そして今、妻となり母となり、つつましく平凡な毎日の明けくれの中でコスモスの花は、静かで平和な安らぎを与えてくれます。
家の床の間にコスモスを一輪さしてみました。それだけで部屋の中が静かなうるおいをただよわせてくれます。
そういえば、このあいだ長男の幼稚園にいった時、園の庭いっぱいにコスモスが咲き誇っていました。いつだったか遠い昔、汽車の窓からながめた名も知らぬ小さな駅のホームいっぱいに、コスモスの花が乱れ咲き、その清そな美しさが今も忘れられない。
わが家に庭があったら、いっぱいコスモスの花を咲かせるのに、とても残念です。
ひっそりと咲くコスモスの花は、私の心のあこがれ。つつましく静かなたたずまい、そして何事にも耐えぬける強さを...。
昭和四十三年十月二十五日 愛媛新聞「てかがみ」掲載
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