子ばらい
ドタン、バタバタ満二歳をすぎた三男は、ちょっと油断すると、ハダシで表へスタスタ。
「待ってらっしゃい」なんて、上品なこといって追っかけていたのでは間に合わない。
おかげで、せっかくの色白も、お日様はえんりょなく照りつけて、顔も手もまっ黒。
三人の男の子に囲まれて、毎日のにぎやかなこと。一日里のお店とわが家をきりきり回って日が暮れてしまう。
それでも私たち夫婦は、まだ二人ぐらいは子供がほしいなんて話し合ったりする。
友だちの中には、小学生一人きりで、子ばらいも終わってのんびり、奥様業に専念している人もたくさんいる。
テレビの話をしても、こちらにとんと通じない。昼のメロドラマなんて、とんでもない。夜も朝も落ちついてテレビなんて見ていられない。
夕食時に子供が見るテレビマンガぐらいで、友だちは「九時すぎたらいいのがいっぱいあるわよ」なんて話すれど私には縁のない話だ。
子供たちと九時のサイレンを合図に、テレビを消して親子ともども寝てしまう。早寝早起きが、わが家のモットーである。
上の二人は小学校で手がかからない、そのかわり下のチビちゃんに、二人分ほど手がかかる。
それでも、まだ子供がほしいなあって友だちに話したら、友だちは「今日の時代に、子供は一人か二人で十分よ。今ごろの子供なんて、親を養ってくれるもんですか」そんなことばを聞くと悲しくなる。
私も主人も子供が好き。だから子供を育て、惜しみない愛を与え、返ってくる愛を、期待なんかしていない。
子供たちが、人生のすばらしさ、生きていることの尊さを知ってくれれば、それで十分。
年とった人から、よく子ばらいの最中が、人生の中で一番楽しく、生活に張りがあるものだとか聞く。
そうかもしれない。朝から晩まで、主人と子供中心に一日がくるくる回っている。
子供に手がかからなくなったら、あれこれ、したいこと、行きたいところ、いっぱいある。
でも、私たち夫婦には、まだまだ遠い先のことでしょう。
昭和四十六年八月二十三日 愛媛新聞「てかがみ」掲載
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